投稿日:2016年01月11日

住宅医コラム 意見交換2016-62


昨年も、残してほしい優れた建築空間がたくさん壊されていきました。そのことを知るたびに悲しい気持ちになるのです。このように簡単に壊されることを阻止するためには、どうしたらいいのでしょう? まずは、壊されずに残って、そして愛されて使われている建物を大いに褒めて、そのように使うことが「褒められること。」と多くの人に認識してもらうことなのでは。と考えました。そこで本年は、素晴らしい改修建物を訪問し絶賛しよう!とうことで、「改修建物を訪ねて」を1年間お送りさせて頂きます。

 

「改修建物を訪ねて」

究極の改修建物~京都・俵屋

三澤文子(MSD)

 

昨年の3月、京都、俵屋さんに1泊いたしました。言わずと知れた、京都の俵屋さんは、江戸中期に建てられた商家が旅館になり今に至るわけなのですが、これこそ真髄の改修建物。毎年のように改修、修繕がなされ、瑞々しい息をふきこまれて益々美しさを増した空間になっていっています。これは、やはり体感してみなければなりません。

高級なお宿にとまるということで、少し緊張するのですが、門をくぐると出迎えてくださる俵屋の方々の表情・所作から、すぐにくつろいだ気分になれるのが不思議です。くつろいでしまうと、根っからの地がでてしまい。キョロキョロジロジロ。そしてコンベックスを出し・・・という建築小僧の性分がでてしまうのが困りものですが。

 

今回は新館のお部屋にとおされました。新館は吉村順三先生の設計なのですが、その後の改修の積み重ねを考えると、施工する職人さん、それを束ねる中村外二工務店の中村義明さんのお顔が思い浮かびます。そして、お会いしたことのない俵屋のご主人、年さんのことも。年さんこそ、目利きの素晴らしいデザイナー・建築家なのです。

なにしろ、繊細な気配り目配りがされた空間にいると、逆にくつろげるのが不思議です。雑な空間にいると、気がざわざわしてくつろげない。これも設計者のサガなのでしょう。

部屋の隅には、足を伸ばせる窓際の机。座るかどうかは別にして、2人用の席に、温かさを感じます。

 

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ここでも、細部に目が行くわけで、建具の見込み・みつけの細さにうっとり。

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とはいえ、ペアーガラスが・・・なんていう現実が一瞬、頭をよぎるものの、すぐに振り払って、庭につながる窓辺を堪能。それにしても、今さらかもしれませんが、雪見障子がいいな。なんていう発見もあります。

 

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見上げれば、天井の網代張りは、よくみる網代のおよそ2倍の巾。「太い!」これはここで編みながら張り上げるという手間のかかる天井仕上げだそうです。想像を超えた手間のかかり方。

 

 

さて、他の空間を探索しようということで、私たちのお部屋を出てウロウロ。

まずは、玄関近くの図書室。これが格別な空間なのです。

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本のある空間は、感性と知性がにじみ出て素敵。右脳の左脳が融合するような。この空間のつくられ方も、暮らす(ここでは訪れる)人のこころをリラックスさせることを意図していることがわかります。

 

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この小さなテーブルも、骨董的な古いもの。時間の流れを感じ、さらに「大切に、丁寧に使っているのだな。」と感じさせます。

 

 

俵屋さんの各シーンを巡っていくと、本が1冊書けるほど。このまま続けていくとたいへんなことになってしまいますので、このあたりでストップしますが、とにかく一度体感していただき、「古いものの良さを継承しながら、今に合わせて改修してくことの大切さ」を感じ取ってほしいと思います。

そして、良い改修をするのには、腕の良い職人が必要だということも。この本の帯にもそう書いてありますよね。

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