投稿日:2015年01月10日

住宅医コラム 意見交換2015-50


妻にとっての定年リフォーム
宝塚Iさんの場合 ~ その1 リフォームをするに至るまで

三澤文子(MSD)

 

転勤族だったIさんの夫妻は、長らく関東で過ごされて、阪神大震災前に関西に引っ越してきた。
借り上げ社宅としてあてがわれた住まいには納得できない Iさん(妻)は、苦労して、気に入った平屋の家を探し出した。昭和37年に建設されその住宅は、もと裁判官だった方が、当時設計者に設計をお願いして建てた家であった。その元持ち主が、その家をずいぶんこだわって建てて、とても気に入っていたことは、自分の家を四恩庵と名付け、その名の句集をつくっていることからもうかがえる。

 

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Iさんもこの家がとても気に入っていた。小ぢんまりとしていて、板壁の内装は落ち着きがある。
庭にはお気に入りの樹木もある。
ただ、社宅であるがゆえに、定年になれれば、どうするのか方針を決めなければならない。

 

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さて、夫の定年の年がやってきた。都会に近い上に、駅にも近いという利便性を考えると買い替えなどは難しい。どうしても庭付きの1軒家に住みたいIさんにはマンションを買うという選択肢はない。そこで、とりあえず、この社宅である平屋の家を大家さんから直接借り受けることにした。そして4年間家賃を払った後、この家を買い取ることになったのだった。

 

家を買い取ってから、Iさんのリフォームへの悩みが始まった。とても気に入った家なのだが、やはり古い家。傷んできているところも目に付く。また木製シングルガラスの建具は隙間風が入り込み、寒さが苦手の夫は灯油ストーブが離せない。収納は少なく、それゆえモノが片付かない、などなどが、ストレスになってIさんを悩ませ続けた。

 

Iさんは住宅雑誌などを見て、さまざま研究し何回か設計事務所に相談することもした。ただどうしても自分の気持ちをわかってくれる設計者に出会えずに8年間。60歳代後半に入りかけた自分の年齢のことも考えると、リフォームの悩みも切羽詰ったところまで来ていた。はたしてリフォームを諦めて、さまざまストレスのあるこの古い家に、このまま住み続けることになるのか・・・。そんなときにひょんなきっかけで私と出会うことになったのだ。

 

出会いとは不思議なものがある。私もIさんの このリフォームに至るまでの長い道のりを聞いて、まずは同情したし、とにかく何とかしてあげたい。という思いだった。また自分であれば、Iさんの思いやこだわりに応えてあげられる。といった自信もあった。

 

またIさんが言うには、多くの友人から「なぜそんなに住まいにこだわるの?もっと簡単に考えたら?」と言われ、しかしながら簡単に考えた友人からは「リフォームに失敗した。さんざんな目にあった。」と愚痴られる。といった話。リフォームに悩んでいた時期のIさんは「自分の想いをカタチにしてくれ、リフォームをしてくれる設計者は、いったいどこにいるのか?と泣く思いだった。」そうである。

 

このように真面目にリフォームを考え、悩んでいたIさん。そんな方に、運よく出会えた私だったが、もし出会えなかったなら・・・。と考えると、「私たち住宅医がここにいるよ!」と叫びたくなる思いが沸き上がってきた。
                                                つづく